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800cc時代のタイヤ開発競争
インテリマーク編集部
2007年1月15日

2002年にMotoGPクラスが開設され、世界グランプリ最高峰クラスが4ストローク990ccマシンになってから、圧倒的な強さを誇ったメーカーと言えばどこを思い浮かべるだろうか。
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■990cc時代を制覇したミシュラン

多くの方がホンダやヤマハなど、バイクメーカーのいずれかを思い浮かべるに違いない。しかしながら、マシン本体以外に忘れてはならないのはタイヤの存在だ。タイヤの開発競争においていえば、990cc時代にMotoGPクラスで完全勝利とも言える圧倒的な強さを誇ったのは、間違いなくフランスのタイヤメーカーであるミシュランだ。ただし、このミシュランの優位性が、800cc時代に突入してからも永久に続くとは限らない。
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ここでは、MotoGPが約1週間後に冬季テストを再開するまでの静かなうちに、タイヤに関する話題を少し紹介しておきたい。

■ブリヂストンの成長により、800cc化以降も加熱するタイヤ戦争

写真MotoGPバイクに乗るライダーの誰もがミシュランを履きたがる中、990cc時代の終盤になって、F1を制覇した経験を持つ日本のブリヂストンが、ようやくMotoGPでもミシュランと同等に近い戦闘力をつけ始めた。ブリヂストン・タイヤを使用するライダーの数も今年は10人となり、ついにミシュランの9人を上回っている。

これらの状況は、今年から始まる800ccクラスのタイヤ競争をさらに面白いものにするだろう。また、マルコ・メランドリなどの強豪ライダーが、自ら望んでミシュランからブリヂストンにタイヤ・サプライヤーを変更するようになったが、この傾向は今後も強まり、MotoGPクラスにおけるタイヤ開発競争をさらに激化させる筈だ。

また、小排気量クラスの覇者であるダンロップも、2006年にはTECH3ヤマハのカルロス・チェカの協力を得て、990cc4ストロークのグランプリマシンが発する高い馬力やトルクを路面に伝える技術の研究に本腰を入れ始めた。そして今年はその開発の行方が玉田誠選手に委ねられる。

■財政難のチームを圧迫する価格高騰

マシン性能が大幅に向上すると、いいタイヤを履かない事にはせっかくの高いエンジン性能が効率良く路面に伝わらないというジレンマも発生する。この事から、タイヤ競争は激化の一途を辿る訳だ。しかしながら、これに並行してメーカーの開発投資が増えればタイヤの値段も上がり、スポンサーのつかない一部のサテライト・チームはミシュランやブリヂストンを履く事ができず、結果としてライダーやマシンの実力に見合った成績が残せないという問題が生じる。
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これは後発のタイヤメーカーからすれば、いいマシンやライダーに恵まれる機会が減り、結果としていつまでも開発が進まないという状況を生む事にもなる。

費用のないチームが勝てないのでは、レースは裕福なチームの独壇場となり、グランプリそのものが魅力を失ってしまう。実際、サテライトチームが1年間に1台のマシンに支払うリース費用は、500cc時代と比較して1台あたり1.5億円程度の値上げがされたと噂されており、それに加えてタイヤに支払う年間費も高騰を続けるのであれば、勝利が得られない弱小チームはスポンサーを獲得できずに永遠に財政難のまま衰退を続けるという悪循環にも陥りかねない。

■新タイヤレギュレーションはミシュランの優位性を奪うか
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白熱しすぎるタイヤ開発投資と、上記の悪循環を阻止するべく800cc化と同時に制定されたのが、今年から導入される新しいタイヤ・レギュレーションだ。このルールにより、過去2シーズン中にドライ路面でレースで2回以上の勝利を収めたタイヤメーカー(ミシュランとブリヂストンが該当)は、各グランプリ初日のフリープラクティス開始までに1ライダーあたり31本のタイヤをレース運営者に予め申告し、一部の例外事項はあるが、レースウイーク中はそれ以外のタイヤを持ち込む事が禁止される。

すなわち今年までは、ミシュランなどはレースウイーク初日の各ライダーの走行結果を即座に分析し、フランスの工場に指示して最も路面に適したタイヤを翌日までにサーキットに持ち込むという芸当もできたのだが、今シーズンからはそのような行為がルール上不可能になる。この行為が許されるのは、過去の勝利数がこのレギュレーションに該当しない唯一のメーカーであるダンロップのみだ。
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■求められる事前のシミュレーション能力

ちなみに、ミシュランとブリヂストンは、この新レギュレーションを歓迎する声明を発表している。今後この2社は、過去に収集したデータを実戦に向けて分析し、最大限に有効となるシミュレーションを、レースウイークの開始までにいかに予め完璧に行えるかに、勝利の行方がかかってくる。
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なお、今まででも主に日本で開発したタイヤをヨーロッパに持ち込んでいたブリヂストンにとっては、ライバルであるミシュランの地の利を奪うという意味では、悪くないルール改正だと言えるかもしれない。

写真■TECH3には朗報?

また、レギュレーションの適用を受けないダンロップは、タイヤの持込タイミングや本数に制限を受けない優位性を活かして、レース現場をタイヤ開発の研究所として有効活用し、年間を通して他の2社のタイヤの性能にどこまで近づけるかに力を注いでくる筈だ。ダンロップをスポンサーに持つTECH3チームに移籍し、カルロス・チェカからタイヤ開発のバトンを引き継いだ今年の玉田誠選手にも、期待のかかる1年となる。

いずれにしても、マシンの800cc化によりタイヤに伝わるトルク特性が変わり、タイヤレギュレーションも同時に変更された2007年は、ミシュランとブリヂストンおよびダンロップの3メーカーの、それぞれの戦略が浮き彫りとなる興味深いタイヤ戦争を期待する事ができそうだ。


■レース開始直後からタイヤの性能を引き出す道具

さて、いかにタイヤの性能が向上しようとも、レースシーンで最も適した使用方法を守らない事には、その性能を最大限に発揮する事は不可能だ。一定温度まで温まらなければタイヤは機能してくれず、アスファルトをしっかりとグリップはしてくれない。高級な靴である以上、利用には細心の注意が必要とされる。
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レースの開始直後から、ある程度のグリップ力をライダーに保証してくれるのが、スターティング・グリッドでよく見かけるタイヤウォーマーだ。タイヤウォーマーはその名の通り、予めタイヤに被せておく事で、レースタイヤを事前に温めておいてくれる便利な道具だが、レース関係者でもない限り、その構造や利用方法をご存知の方は少ないかもしれない。 今回のタイヤに関する話の最後として、MotoGPチームが使用するタイヤウォーマーのメーカーや使用方法、材質などについて少し紹介する。
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■スペシャリストにより開発されるタイヤウォーマー

タイヤウォーマーは、タイヤのゴムを最適な温度にまで加熱、および保温する機能を有するハイテクの道具だ。温度が低すぎては役に立たないのは当然だが、加熱しすぎてもゴムが変質してレース結果に悪影響を与えてしまうため、その製造にはMotoGPチームも直接関わっている。
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昨年までミシュラン・タイヤを使用していたグレッシーニ・チームは、TTサーマル・テクノロジー社(TT Thermal Technology)からタイヤウォーマーの供給を受けている。この会社は、グレッシーニ・チームのエンジニアや、他の大手タイヤメーカーとの共同作業により、専用のタイヤウォーマーを開発し、製作するスペシャリストだ。標準的なタイヤウォーマーの組み上げ作業には6人がかりで約2時間を要し、カスタムバージョンの場合には約3時間かかるという。

■5層構造からなり、フロント用とリア用の合計重量は2キログラム

標準的なタイヤウォーマーは約80℃まで温度が上昇するように設計されており、それに覆われたタイヤがレース可能な温度にまで到達するには約50分から60分を要する。タイヤウォーマーの内部には温度を検知するサーモスタットが設置されており、タイヤが適温に達するのを検知すると加熱を停止し、タイヤの温度が下がると再び作動するようになっている。
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タイヤウォーマーの構造は5層の異なる材質からなり、サンドイッチ状に複数の素材が重なり合ってできている。タイヤと直接的に接する部分は透明のポリエステルのシートが利用され、その背後には電流の流れるカーボン製のフィラメントが存在する。さらにそれらをもう一枚のポリエステル・シートと耐熱材が覆って放熱を抑制し、その外側をポリウレタン樹脂が包んでいる。1つあたりの重量は、フロントタイヤ用が800グラム、リアタイヤ用が1200グラム、市販価格は9万円から12万円。

1つのMotoGPチームは、だいたい24個のタイヤウォーマーを常備してレースに臨むようだ。


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