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バレンシアGPに実戦投入、開花したエアバッグ技術
インテリマーク編集部
2007年11月11日

先週のMotoGP最終戦のバレンシアGP小排気量クラスにおいて、グランプリ史上初となるエアバッグシステムの実戦投入が行われていた事をお気づきの方も少なくないのではないだろうか。バレンシアGP125ccクラスの最終予選の国際映像では、アジョ・モータースポーツのミヒャエル・ランセデールの転倒時、見慣れぬ光景が全世界に向けて放映され、その後の話題を呼んでいる。

■グランプリに実戦投入されたダイネーゼのエアバッグ・システム

バレンティーノ・ロッシをはじめ、多くのグランプリ・ライダーにライディング・ウェアを提供するスポーツ用プロテクターの製造メーカーとして世界的に有名なイタリアのダイネーゼ社(Dainese)は、ロードレースを戦うライダーに向けて研究開発を進めてきたエアバッグシステムの「D-airRレーシング・システム」を、バレンシアGPで実戦投入していた事を11月8日に明らかにしている。

■バレンシアGPでは3名のライダーが着用

バレンシアでこのD-airRを使用していたのは、125ccクラスではマルチメディア・レーシングのシモーネ・グロティスキとアジョ・モータースポーツのミヒャエル・ランセデールの2名、250ccクラスではジレラのマルコ・シモンチェリの1名という、小排気量クラスの合計3名だった。

■開発対象はロードレースを戦うライダー

ロードレースで過酷なバトルを戦うライダーを対象に開発されたこのエア・バッグ・システムは、ダイネーゼ社の最先端技術の開発部門のあるD-TecR(ダイネーゼ・テクノロジー・センター)が10年間の研究と試作を重ねてきたものであり、ようやく今回のグランプリへの実戦投入に行き着いたようだ。

■エアバッグ投入の経緯は首や鎖骨周辺の保護

ダイネーゼによれば、D-TecRにおけるこの10年間の研究の焦点は、従来のライディング・ウェアでは完全に保護するのが難しかった部分である肩と鎖骨ならびに首をいかに守るかにあり、これを実現する上で過去に先例のなかったエア・バッグを投入するという結論に行き着いたという。実際、ここまでの検証データでは以前には不可能と思われた程の大きな衝撃の緩和が、システム装着時の首周辺に効果として見られるという。


■収納個所と作動方式

このD-airRレーシング・システムには注目すべき点がいくつかある。特に気になるのが、そのシステムの作動方法と、作動前は従来のレーシング・スーツと何一つ見分けのつかないエアバッグを含むシステム全体の収納個所だ。

■収納は背中の空力部分

まず収納方法については、ヘルメットから首後方にかけての空力特性の向上を目的に10年ほど前からグランプリで採用されるようになり、今では目にするのがあたり前となったライディング・ウェアの背中周辺の盛り上がりだが、この部分にD-airRのシステムの全てが収められている。

■作動はセンサー技術を駆使し、バイクとは無接点、

更に気になるのがエア・バッグが膨らむタイミングだが、この部分には最新の電子技術が駆使されており、フロントとリアのローサイド、ならびにハイサイドなど、どんなタイプの転倒でも正確に検知するようだ。また、バイクとは無接点、すなわちライダーとバイクをワイヤーなどで結ぶ事なく、スーツ単体で正常にこれらの判断をやってのける事がこのシステムの最大の売りだという。

ダイネーゼが最大限の力を注いで洗練されたテクノロジーを持って仕上げたというその転倒検知のメカニズムは、エアバッグと共にライダーの背中に仕込まれた加速度計とジャイロスコープ(角速度計)からの信号が、データ入力の起点となっている。

加速度計とジャイロスコープからの信号はデータ解析アルゴリズムを搭載したプロセッサーに送られ、ここでライダーの転倒が検知された場合にプロセッサーは続いてエアバックシステム側に作動命令を発行する仕組みとなる。作動命令を受け取ったエアバッグ側はガス発生装置を瞬間的に起動し、発生したガスは40ミリ秒の間にエアバッグの隅々にまで充填される。

■転倒検知のアルゴリズム開発には3年間

決して誤動作の許されないこのエアバック作動のトリガーとなる転倒検知のアルゴリズムはハードウェアとソフトウェアの両方で構成されており、この部分の完成には3年間の月日と研究員の必死の努力が必要とされたようだ。

転倒検知のアルゴリズムの製作過程においては、レーシング・バイクの通常走行時の挙動、ならびに様々な転倒時の挙動を示す大量なデータが実験により収集されている。これらのデータを集約すると同時に度重なるアルゴリズムの改良を加えながら完成したのが、今回発表されたD-airRレーシング・システムの中核と言える転倒判断のアルゴリズムだ。


■社内外の専門家集団により組織された開発プロジェクト

ダイネーゼ社はこのD-airRレーシング・システムを完成させるにあたり、イタリアのパドバ大学の機械工学部との共同研究を進めるなど、社内外の有識者を集めた特別プロジェクトを設けたという。大学以外には軽量データ収集システムを開発する2D社、自動車メーカーであるフィアット社の品質管理部門、自動車のエアバッグを製造する米国の自動車部品メーカーであるTRW社なども、今回の製品の共同開発に携わっている。また、走行データの収集にはKTMのレーシング・チームが全面協力したようだ。


■ダイネーゼが誇る高性能・・・市販の予定は?

全くバイクとの接点を持たない独立したシステム、転倒判断のアルゴリズム、急速なガスの充填速度、従来のプロテクターでは不可能だった部位の保護など、既存の類似したプロテクション・システムとは技術的にも性能面的にも一線を画している事を、ダイネーゼ社は今回のD-airRレーシング・システムの発表の中で強調しているが、ここで気になるのが公道を走る一般ライダーに向けての市販予定だ。

■公道向け研究プロジェクトがすでに発足

ダイネーゼ社は、今回バレンシアGPに実戦投入されたD-airRレーシング・システムはプロレーサーとアマチュアのエキスパートを対象に開発された製品であり、一般公道向けのものではないとしているが、研究センターではすでに「D-airRストリート(公道)・プロジェクト」が発足しており、公道を走る一般のオートバイ利用者を対象とした製品開発に向けての研究を今後は続ける事を表明している。


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