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MotoGP第9戦オランダ、伝統のダッチTT
インテリマーク編集部
2007年6月28日

6月28日(木)より、オランダのアッセン・サーキットにおいて、MotoGP第9戦目となるオランダ・グランプリ、伝統のダッチTTが開催される。今年もダッチTTの歴史に従い、決勝レースは6月最後の土曜日に行われるため、レースウイークは木曜日からの3日間だ。
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ここでは、天候が各ライダーやチームの希望に反し、前回のイギリスと同様に雨模様の不安定な天候になりそうな今週のアッセンに関する新着トピック、ダッチTTやサーキットの歴史、昨年と今年のコース改修内容、各チームのアッセンに向けての状況やコメント、ならびに昨年のレース内容などを紹介する。


■激務となるイギリスからの機材の移動作業
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今年のグランプリ・シーズン中、今回のオランダ戦は全てのMotoGP関係者にとって最も忙しい時期と言える。4日前となる6月24日の日曜日に前回のイギリスGPでの決勝レースを終えたばかりの各チームは、イギリスからの海峡を隔てたオランダにフェリーなどで移動し、全く休む間もなく初日午前のフリー・プラクティスを迎える事になる。
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GP関係者の中でさらに最も忙しいのは、イギリスで広げていた全ての機材を速やかに撤収し、3日後の水曜日の午前中までにアッセンのパドックを完成させなければならない各チームのホスピタリティー・スタッフ(チームのパドック機材やレストランなどの施設組み上げや運営、およびその運輸などを担当)だ。

ホスピタリティー・スタッフは、日曜日にイギリスのドニントンでチェッカー・フラッグが降られた直後、全ての機材やバイクなどを解体し、トラックに積み込む作業を開始している。

■イギリスからアッセンに向けての輸送スケジュール

写真グレッシーニ・ホンダチームの例では、レース終了から14時間以内にパドックの全ての機材を夜遅くまでかけてトラックに積み込み、朝日が昇る前の暗いうちにドニントン・パークを出発して、200kmの距離を約4時間をかけて移動し、イギリスのハーウィック(Harwick)の港まで到着している。

港に着いたチームのトラックはすぐにフェリーに積み込まれ、そのまま夜通し海峡を渡って月曜日の午前の早いうちにオランダのフック・ファン・ホランド(Hoeck Van Holland)の港に到着し、再び休む間もなく250kmの距離を走って月曜日の正午までにはアッセン・サーキットに到着したようだ。

■ホスピタリティー・スタッフの休息時間は皆無

6人のスタッフを指揮してグレッシーニ・ホンダのホスピタリティー運営を統括する責任者のマウリッチオ・ジョルダーニ氏は「まさに時間との戦い。サーキットに到着しても作業が終わる訳ではなく、再び14時間をかけて機材をトラックから全ておろし、ホスピタリティー施設をパドックに再び設置して、水曜日正午の昼食を締め切りに全ての機能を再開しなければいけない。」とコメントしている。
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■イタリアではワールド・ドゥカティー・ウイークが開催

話はオランダから少し離れるが、ダッチTTの開催日と同じ6月28日から4日間、イタリアのミサノ・サーキットでは、何千人ものドゥカティーファンが一堂に会するワールド・ドゥカティー・ウイークが例年通り開催される。
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■オランダの後も休みなく移動するカピロッシとストーナー

当然、ダッチTTに出場するドゥカティー・ワークスのライダー、ロリス・カピロッシとケーシー・ストーナーの2名も、オランダでのレース終了直後に忙しくイタリアに移動し、最終日午前からの写真撮影会とサイン会に参加をする予定だ。

なお、レース当日のミサノのパドックには2台の巨大スクリーンが用意され、今週土曜日のオランダのレースを何千人ものドゥカティーファンが一緒に観戦して大いに盛り上がるようだ。

■金曜日と土曜日にはベイリスなどの有名ライダーが参加

このイベントにはMotoGPライダーの2名以外にも多くの有名ドゥカティー・ライダーが登場する予定となっている。2日目の金曜日と3日目の土曜日には、SBKドゥカティー・ゼロックス・チームのトロイ・ベイリスとロレンツォ・ランチがドゥカティーのワークスSBKマシンである999F07と共に姿を現し、ミサノ・サーキットでのデモンストレーション走行や、パドックでのファンとの集いである「ドゥカティー・ユニバーシティー」に参加する。
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その他には、MotoGPデスモセディチの生みの親であり、ドゥカティー・コルセの責任者としてMotoGPのピット内にも毎回姿を見せているフィリッポ・プレツィオージや、ドゥカティーSBKのサテライト・チームであるステリルガルダのライダーを務めるルーベン・ザウス、WSSのドゥカティー・ゼロックス・ジュニアチームの2名、およびドゥカティーMotoGPプロジェクトの専任開発ライダーであるビットリアーノ・グアレスキもこの集いに姿を現す。


■幸運なファン

このワールド・ドゥカティー・ウイークの開催期間中、SBKドゥカティー・ゼロックス999のツー・シーター・マシンには、幸運な30人のVIPゲストが後部座席に招待され、ミサノ・サーキットでの高速クルージングを楽しむ予定になっているが、今年の目玉はこれだけではない。

■ランディー・マモラと共に走る高速ミサノ・クルージングが競売に
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ドゥカティーのツーシーター・マシンと言えば、ランディー・マモラがミハエル・シューマッハなど各界の著名人を後部シートに乗せ、ウイーリーやジャックナイフつきの高速クルージングを行った後部座席付きのデスモセディチが有名だが、今回のイベント中に行われるチャリティー・オークションでは、ランディー・マモラの運転するこのデスモセディチの後部座席に乗ってのミサノ高速クルージングも競売にかけられ、6月30日(土)の午後4時までに最高額を入札した4名のファンが、マモラの後部座席への乗車権利を勝ち取る事ができるという。なお、イベント開催前の6月16日までに別口のオークションもネット上で行われており、すでにその他の11名のファンは、500ユーロ以上の入札でこのマシンの乗車権利を獲得している。

■オークションの売り上げはアフリカの医療支援に
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このオークションの主催は、前回のイギリスGPで開催されたデイ・オブ・チャンピオンズのオークションを運営した事でも知られる慈善団体のライダーズ・フォー・ヘルスであり、今回の売り上げも全てアフリカの医療輸送システムの構築支援に当てられる。

なお、見事にこの乗車権利を勝ち得た合計15名のファンは、オークション終了日の翌日の朝9時までに現金かクレジットカードによる支払いを済ませ、簡単な健康診断を受けた直後に、用意されたライディング・スーツとヘルメットを着用してマモラと共にコースに出る事ができる。


■伝統あるダッチTTの舞台、オランダのアッセン

アッセンのコースがサーキットとしての設備を持ったのは1954年のオランダ・モーターサイクル・グランプリ、通称ダッチTTであり、それ以前はマン島TTなどをはじめとする多くの古きヨーロッパの伝統的なレースと同じく元々は一般公道レースだった。
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■世界一安全な「公道」レース

アッセンがWGP(MotoGP)の公道レースコースとして使われ始めたのは1949年の事であり、その5年後にライダーと観客の安全面を確保する為の施設が追加され、レース専用のサーキットとなったが、コースレイアウトそのものは他の一般道路から切り離しただけの文字通り公道のままだった。
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■2年前まで保たれたTTレースの伝統

実際、観客席やアスファルト周辺に縁石やセーフティー・ゾーンが追加されたものの、2年前の2005年までの75年間は1949年当時の公道レイアウトを起源とするコースがほぼ継承され、グランプリの伝統とも言えるTTの雰囲気が唯一残るサーキットとして、ファンのみならず特に多くのライダーを深く魅了し、70年以上も「ダッチTT」の名を引き継ぎながらモーターサイクル・レースの総本山としての絶大なる人気を博していた。


■不評を買う昨年の大規模コース改修
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ところがダッチTT76年目となる昨年の2006年、いまだに多くのライダーが「理解に苦しむ」と発言している大改修がアッセンを襲っている。伝統の北コースの約4分の1、特に人気の高かった複数の短いストレートを高速S時などがつないでいた高速テクニカル・セクションの第1区間がほとんど削り取られ、代わりに配置されたのは上海サーキットの第1コーナーに似た「ノースループ」と呼ばれる非常にタイトな近代F1サーキットと見まがう低速複合コーナーであり、アッセンは第1コーナーを曲がった直後にかつての第2区間付近に折り返されるというコースレイアウトに変貌した。
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■ロッシ「いまでも改修した意味が分からない」

写真第1区間以外にも、いくつかのコーナーは観客の見通しなどを考慮してバンク角が削られてフラットな路面に改修されており、コースの一部の雰囲気が近代的なサーキットに近づいた事で、「かつてのダッチTTの魅力はすでに薄れた」と発言するライダーが昨年は続出した。バレンティーノ・ロッシをはじめ、多くのライダーは今週のオランダ戦を前にしても「いまだに去年の改修の意味が理解できない」とコメントしている。

■かつての高速区間にはボーリング場

速度が乗りやすく、抜き所が満載の高速コーナーが集結していたかつての第1区間を削り取って余った広大なエリアには現在、観客用のレジャー施設として新設されたボーリング場やTT博物館、ゲームセンターやレストランなどが建設されている。

今期からMotoGPに復帰したプラマック・ダンティーンのアレックス・バロスは、新しくなってもアッセンも好きだとしながらも「安全面を考慮した改修工事なら分かるが、なぜ伝統のアッセンを改修しなければいけなかったのか理解に苦しむ」と述べている。

■色あせたものの、決して消えないアッセンの魅力

なお、第1区間以外のコースレイアウトは基本的に以前のレイアウトのままなので、アッセンの魅力が完全に消えた訳ではなく、好きなサーキットである事には違いないと、ロッシをはじめとするほとんどのライダーはコメントの最後に追加しており、昨年の白熱のレース内容を見ても分かる通りだが、アッセンが昔と変わらぬ2輪ロードレースに適した激戦を呼ぶサーキットである事は、抜き所が減った現在でも変わらぬ事実だろう。
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当然、新しいコースレイアウトが以前のアッセンよりも気に入ったというライダーもいる。かつてのアッセンを大の苦手としていた現TECH3ヤマハの玉田誠選手や、昨年の改修直後のアッセンで2位表彰台を獲得した当時カワサキの中野真矢選手はその少数派の一部だ。


■今年は安全面の改修が中心

昨年にバレンティーノ・ロッシとトニ・エリアスが初日午前のフリー・プラクティス中に転倒して骨折した事例を受け、今年のアッセンはランオフエリアの拡張などの安全面での追加改修が、FIM、およびロッシやカピロッシなどが代表委員を務めるライダー安全委員会の要請により行われている。
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■大規模なエスケープゾーンを5つ新設

去年まではコースを外れるとすぐにグラベルという、高速コーナーの途中にコースを少しでも外れたら転倒を避けようがない危険な箇所が目立ったようだが、今年はそれを回避する事を目的にアスファルトの拡張を施したエスケープゾーンが5箇所に新設された。

■エスケープゾーンのおかげで最後まで白熱した昨年の最終ラップ

写真昨年のレース残り2周の段階にコーリン・エドワーズがニッキー・ヘイデンとのトップ争いの中、RUSKENHOEKカーブでコースアウトしたが、当時からあったアスファルトのエスケープゾーンのおかげでエドワーズは1秒のみのロスでコースに復帰し、そのまま最終ラップに向けて白熱のバトルを再開している。今回新設されたエスケープゾーンはその作りに習って設計されているという。

■去年のロッシの転倒箇所も改修

アスファルトのエスケープゾーンが追加されたのは、ノースループ(HAARBOCHTとMADIJKとOSSEBROEKEN)、STRUBBENカーブ, DE BULTカーブの出口と MEEUWENMEERカーブ、および昨年ロッシが転倒して骨折したRAMSHOEKカーブだ。拡張されたアスファルトのまわりには縁石と人工芝も今年から設置されている。

■観客席の新設とヘリポートの移動も
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コースレイアウトに関係のない部分の改修では、STRUBBENカーブの脇に青いプラスチックシートを設置したコンクリート製の観客席を新設した他、ヘリポートの位置をよりメディカル・センターの側に移動したようだ。


■極端に全長が短くなり、26周回のレースとなったアッセン
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改修前の2005年のアッセンは、MotoGPカレンダーの中でも最も長い6,027メートルの全長を誇っていたが、全長4,750メートルへの縮小が2006年の改修時に計画され、実際に出来上がったサーキットを計測した際には、さらに200メートル短い4,555メートルになっていた事が判明している。かつて14あった右コーナーは6つに減らされ、13あった左コーナーは11となった。このコースの短縮により、かつて21周回だったオランダ戦は昨年から26周回のレースになっている。


■コースの特徴

写真アッセンは、幅の狭い古い公道の面影を持つ曲がりくねったコースレイアウトでありながら高速であり、超高速コーナーでの機敏な切り返しが要求されるテクニカルサーキットだ。最近建設されたサーキットの多くは幅の広いロングストレートと中低速コーナーが多くを占めるコースレイアウトを特徴としているが、改修された第1区間を除けば、それらとは対極にある古いタイプのサーキットと言える。

■独特の中央が盛り上がった路面

改修された第1区間や一部コーナーは例外だが、古い部分のアスファルトには独特な特徴があり、一般公道と同じ水はけ対策が取られた路面は中央から丸く盛り上がっている。他のサーキットのように平面ではない事から、ライダーはその路面の反りの変化をコーナー進入時から出口にかけて意識する必要があり、これもアッセンの走りの難易度を高くしている特徴の1つだ。

■タイヤの耐久性が重要視されるサーキット:油断できないミシュラン
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タイヤについては、強力なグリップよりも耐久性の方がアッセンでは重要視されるようだ。ちなみに、フランスのルマンと同様にアッセンはミシュランが非常に得意としてきたサーキットであり、1991年からミシュランはダッチTTで破れた事が一度もない。しかしながら、今年はブリヂストンがルマンで圧勝を記録している事から、今週もミシュランはまったく油断ができない状態だろう。


■マシンに要求されるセッティングの方向性
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前回のドニントンと同じくストレートが短いアッセンにおいて、マシンに重要とされるのはエンジン出力の高さやトップスピードではない。バラエティーに富むコーナーの数々や、高速シケインでの切り返し、ならびに激しく変わる路面の傾斜角に対応する上で、アッセンで勝利を狙うマシンには優れたハンドリング性能、シャシー剛性、ブレーキ性能、フロントまわりの良い感触が要求される。
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なお、昨年のアッセンを走ったライダーの一部は、「フラットな路面と低速カーブが追加されたので、セッティングはさらに複雑になった」とコメントしている。


■各チームのアッセンに向けての状況やコメント

以下に、オランダ戦を目前に控えた各チームの状況やコメントを紹介する。

■全てのサーキットで勝つ自信に溢れるドゥカティー
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ドゥカティーのマシンにとっては最も苦手なサーキットして数えられていた前回のドニントン・パークを制し、コンストラクター部門、チーム部門、ライダー部門の全てにおいてランキングのトップの座を確固たる物としながら、なお勢いの止まらないドゥカティー・マルボロチームは、同じく昨年までは苦手としていたアッセンについても明るい見通しを立てている様子だ。

■スッポ監督「まだ年間タイトルは考えない」
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ドゥカティー・マルボロのチーム監督であるリビオ・スッポは、「天気がどうなろうといい戦いがここでもできると思う。条件は前回のドニントンと同じ感じになりそうだからね。アッセンはシーズンの真ん中に位置する戦いだが、まだ年間タイトルについては考えずに、全てのレースで自分たちの最大限の力を発揮できるように努力を続けるのみ」とコメントし、ドニントンでの勝利の経験が、そのままコース特性の近いアッセンでも活きる事への期待感を示している。

■ストーナー「ドゥカティーは馬力だけじゃない」

写真イギリスで今期5勝目をあげ、ランキング2位のバレンティーノ・ロッシを26ポイント差に引き離したケーシー・ストーナーは、「ドゥカティーに弱点はない」と公言した前回のドニントンでのレース後と同様に、ドゥカティーがどのサーキットでも速い事を今回もアピールする構えだ。なお、昨年のオランダ戦でストーナーは4列目12番グリッドからスタートして4位を獲得しており、今年はさらに上の成績が狙えるとしている。

「ドニントンではドゥカティーが馬力だけのマシンじゃない事を証明できたと思う」とストーナー。

「今のバイクとタイヤはどのサーキットでも自分にとっては乗りやすいし、どこでもいい戦いができる筈。年間タイトルの事を考えると、それにばかり心を捕らわれてしまうから、今はまだ全てのレースを楽しんで、この調子を維持できるように作業を進めるだけ。去年は1コーナーで14位まで下がったけど、バトルの中でトップ3にまで到達し、最終的には4位といういいレースができた。今年はもっと上が狙えると思う。」

■カピロッシ「以前のコースは世界一素晴らしかった」

前回のイギリスではレース終盤に転倒してリタイアに終わったが、5列目13番グリッドからスタートして転倒時は5番手を走行していたカピロッシは、全体的な調子は上がっているので、アッセンではムジェロから導入した新型エンジンの調整を進めながら、ドニントンでのノーポイントの挽回をしたいとしている。
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「アッセンは今でも大好きなサーキットの1つ。新しいレイアウトもそんなに悪くないが、以前のレイアウトはさらに上をいく世界で一番素晴らしいサーキットだった。」とカピロッシ。

「去年はバルセロナの大事故による怪我の影響で苦しかったが、今年はいい体調で走れるので高い成績を残すチャンス。ドニントンでは転んでしまったが調子は上がってきており、フロントまわりのセッティングが改善された事がアッセンでは有効だと思う。ドニントンでは天候が悪くて新しいエンジンを試すチャンスがなかなか無かったから、今週はその調整作業を進めるつもり。」


■ドニントンの晩は長時間ミーティングを持ったフィアット・ヤマハ

不安定な天候に悩まされ、今期のミシュランのハーフウェットでの不調に不満を抱えていたフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシだが、4位に終わり落ち込んだドニントン・パーク戦の後に長時間のミーティングをチームと共に実施しており、抱えていた問題の原因究明は済んだとしている。
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フィアット・ヤマハのチーム監督であるダビデ・ブリビオは、「レースのあった日曜日の夜は長いミーティングになった。今週に向けての作業の方向性をより明確にするために、多くの事を話し合った」とコメントしている。

■ロッシ「アッセンが始まればイギリスの事が忘れられる」

ロッシは昨年のアッセンでは初日午前のフリー・プラクティスにおいて激しく転倒して胸を強打、さらに右手首と左足首の骨にひびが入り、痛み止めを打ってポイント圏内での完走を目指すだけという厳しいレースでの戦いを強いられている。ロッシは過去に5勝を記録している得意のアッセンで、ストーナーとのポイント差を削り取るべく、今年は表彰台の頂点に復帰する構えだ。
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「日曜日のレースは嬉しくない結果だったが、あの後でチームと長時間のミーティングを行い、問題点が何かは突き止めたので、あとはそれを直すだけ。大好きなドニントンのレースが4位で本当にがっかりだったから、休む間もなくアッセンでレースが始まるおかげでそれを忘れられるので嬉しい」とロッシ。

「アッセンは大好きなコース。去年は怪我をしてしまったので、今年は勝利を狙って戦いたい。去年にサーキットのレイアウトが変更されてしまい本当に残念。アッセンで一番戦いの白熱する部分だった区間が取り除かれてしまった。なぜそんな事をする必要があったのか、いまだに意味が理解できない。」

■エドワーズ「去年はヘイデンに生涯最高のプレゼントをした」

また、ロッシのチームメイトのコーリン・エドワーズも、昨年のアッセンには深い恨みを抱く1人だ。ニッキー・ヘイデンとの最終ラップでの優勝争いにおいて、トップで進入した最終シケインでいったんコースを外れて転倒。グランプリ初優勝のチェッカー・フラッグを目の前に見ながら次々と他のライダーに交わされ、結果は悔しい13位に終わっている。最後のミスがなければ完全に勝つ事ができたレースだったと語るエドワーズは、SBK時代に2002年のダブルウインを含む3回の勝利実績を持ち、その時代からの多くのファンが見守るアッセンで、今年は優勝を狙う。
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「アッセンは自分のMotoGPでの最高の記憶と最悪の記憶が共存していて変な気分。あれは完全に勝てた戦いだったのに、ヘイデンには生涯で最高の贈り物をしてしまった。」とエドワーズ。

「コースは良く知っているし大好きなサーキット。SBKでは何度も勝ったし、テキサス・トルネードのTシャツを来ているファンや、その旗がいっぱい見れる場所なので、彼らの応援が自分にとっては起爆剤になる。」

「前回のレースウイークはものすごく頑張り、短い時間でドライとウェットの両方のいいセッティングを見つける事ができたので自信を回復した。ここまでのマシンの問題も解決できたと思うし、個人的には表彰台に戻れてものすごく嬉しかった。この調子を維持して、去年のアッセンの災難の分を今回のレースで取り返したい。そのままホームのラグナセカまで好調さを保つ事ができたら嬉しい。」


■揃ってランキング上位につけるリズラ・スズキ勢
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今期のリズラ・スズキ勢は、常に安定した成績を2名のライダーが揃って確保している。イギリスでの3位表彰台獲得により、クリス・バーミューレンの年間ランキングは現在、ストーナー、ロッシ、ペドロサに次ぐ第4位だ。また、念願だったグランプリ初の表彰台を今期の中国GPで獲得する事に成功したジョン・ホプキンスも、チームメイトに次ぐランキング第5位につけている。

■ホプキンス「期待しちゃう」

ホプキンスにとって、アッセンは昨年グランプリでの初の表彰台を獲得したいい記憶の残るサーキットだ。レースでも、タイヤに問題を抱えながらも6位の好成績を収めている。
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「アッセン大好きだから待ちきれない。」とホプキンス。

「去年はここでポールポジションを獲得したし、レースでもグリップに問題がなかればもっといい成績が残せたと思う。今年はブリヂストンがすごく進化しており、どのレースでもどのサーキットでも好調だから、去年のような問題はもう起きない筈。タイヤは常に好調だから。」
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「バイクの調子もすごくいい。どんな路面条件でもトップ集団に入れるところはもう見せたし、今週はさらにすごい結果になるんじゃないかと期待してしまう!レースはドライになって欲しい。800ccマシンはアッセンでも速い筈だから、今年はどのくらいここで活躍できるか楽しみでが仕方ない。」

■バーミューレン「先週のドニントンの走りをここで再現したい」

また、クリス・バーミューレンにとってもアッセンはSBK時代から相性の良いサーキットだ。バーミューレンは2005年のSBKではアッセンでダブルウインを獲得している。
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「先週のドニントンがいい成績だったからアッセンでも再現したい。去年はレース中にいくつか問題を抱えていたが、それでもトップ10に入れたからね。」とバーミューレン。

「ここのコースは大好き。2005年にはSBKでポールポジションとダブルウインを達成したし、その日のファーステストも記録した。ここは他のライダーたちと同じくらいに良く知っているコースだから今週はすごく楽しみ。今の調子をこのまま持続したい!」


■新型Ninja ZX-RRの性能を発揮してきたカワサキ

カワサキのランディー・ド・ピュニエは前々回のカタルーニャで5位、前回のドニントンでは6位の好成績を負傷した身体のまま獲得しており、その新チームメイトのアンソニー・ウエストは、前回のドニントンのデビュー戦で転倒を喫しながらも11位に入ってポイントを獲得している。
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シーズン序盤はライダー2名の相継ぐ怪我に苦しみながらも、やっと新型Ninja ZX-RRの本領を発揮してきたカワサキ・レーシング・チームは、昨年は当時カワサキの中野真矢選手が2位表彰台を獲得した相性の良いアッセンに向けて期待を高めている様子だ。

■金子氏「アッセンには自信を持って挑める筈」

カワサキのテクニカル・マネージャーである金子直也氏は、「天気予報は今回もはっきりしない状態だが、ドニントンの経験を活かして改善を進めるので自信が持てる。去年は中野選手と共にいい結果を残したが、木曜日の最初のセッションまでは800ccになった新型Ninja ZX-RRがどのくらいアッセンに適しているかは分からない。ただ、多くの理由から自信を持って挑む事はできそう」とコメント。
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■ウエスト「まだ学ぶべき事が多い」

どのクラスで走っても雨の速さには定評があるアンソニー・ウエストは、デビュー戦となった前回のドニントンでは、3日目の雨のウォームアップ・セッションでトップタイムを記録している。なお、ウエストはつい最近まで代役ライダーとしてヤマハから参戦していた今期初挑戦となったWSSカテゴリーではドライでも連続優勝を果たしており、もう少しMotoGPマシンで走り込み、慣れる事ができれば、ドライ路面でもレインと変わらぬいい走りが、最高峰クラスでもできるようになると考えている様子だ。
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「グランプリでの初優勝は250ccマシンで戦った2003年のアッセンだったので、ここにはいい思い出がある。」とウエスト。

「すごく高速で流れのいいサーキットだったが、最初の区間が変更されて魅力が少し失われたと思う。ただ、残りの区間は相変わらず素晴らしいし、激しく攻めるコーナーがいくつもあるので、Ninja ZX-RRで走るのが今から楽しみ。」

「速く走りたいが、まだ学ぶべき事は多いし、もっと時間が必要。今回の目標はドニントンと時と同じくらいに作業を順調に進める事。今はまだまわりの全ての事に慣れていかなければいけない時だが、今でもすごく楽しめているし、全てに好感触が持てている。」

■ド・ピュニエ「アッセンはカワサキと相性がいい」

まだ身体の痛みは完全には消えないが、毎日怪我は回復に向かっているとするランディー・ド・ピュニエは、昨年の中野選手の実績と同じく、800ccになってもNinja ZX-RRは今年もアッセンとは相性が良い筈だと考えている。

「バルセロナから調子が上がっているので、この流れをアッセンにも持ち込みたい。」とド・ピュニエ。
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「改修されるまでアッセンはシーズンの中で一番好きなサーキットだった。今のアッセンも好きだが、かつての魅力の大部分は消えてしまった。昔の第1区間はすごく楽しかったのに、今はあまりにも低速すぎる。」

「去年のNinjaの調子がアッセンですごく良かった。カワサキにはとても相性の良いサーキットだと思うし、去年のシンヤの表彰台がそれを証明している。去年の自分は不幸にもウォームアップ中にフロントに問題が発生してしまい、ピットからのスタートになってしまった。」

「まだ肩とひざの怪我は完治していないが、毎日状態は良くなっている。ここまでにトップ8以内で走れる事は示したきたと思うが、今回もトップ8を目標としたい。」


■ドニントンでは揃って落ち込んだレプソル勢

前回のドニントンでは、レースウイーク中に好調だった2名のライダーが揃って残念なレース結果に終わったレプソル・ホンダ・チームは、アッセンでは再びイギリスの決勝レース前までの調子を取り戻し、前戦から本格的に導入した新型シャシーの効果を発揮して高い結果を狙うつもりだ。
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アッセンは昨年度チャンピオンのニッキー・ヘイデンが母国GP以外で初めて優勝を果たした記念すべきサーキットであり、彼の好みのサーキットだ。また、ヘイデンのチームメイトであり、現在はストーナーとロッシに次ぐランキング3位のダニ・ペドロサは、自分が8位に終わった前回のイギリスにおいてポイントリーダーのケーシー・ストーナーが再び優勝し、年間ポイント差を59にまで広げられた事を落ち込んでいたが、その事を深く考える暇もなく、慌ただしくアッセンのレースウイークが始まる事を今は喜んでいる。
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■ヘイデン「今はそんなにプレッシャーは感じていない」

コーリン・エドワーズとの死闘を制し、昨年のアッセンを制したいい記憶を持つニッキー・ヘイデンは、新型シャシーとカタルーニャ合同テストにおける様々な調整により調子の上がったRC212Vで、控えめな表現だと前置きした上でいい結果が残したいとコメントしている。
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「アッセンには去年のいい思い出がある。ホーム以外で最初に勝利だったし、あれは特別な瞬間だった。」とヘイデン。

「過去にすごく楽しんで走る事ができたサーキットだし、いつもいい結果が残せている。とても独特なサーキットだったが、去年の改修以降はそうでもなくなった。でも、いいサーキットには違いないし、世界の他のコースと比べれば今でも特別な印象がある。」
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「前回のレースでは転んでしまったが、ドニントンでは何点かいい兆候があった。バイクのセッティングについて重要な事をいくつか学べたし、フリー走行のうちから速く走れたので自信回復につながった。だから今回も同じ調子でセッティングを仕上げて、また高いグリッド・ポジションを獲得したい。」

「それに、レースではいい結果を今週は残したい。『いい結果』ってのは控えめな表現だけどね。どうなるか楽しみだし、チームにとっていい週末になって欲しい。今はそんなにプレッシャーを感じてないから、ひたすら頑張って楽しむだけ。」

■ペドロサ「すぐにアッセンに来たかった」
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ドニントンのタイヤ選択ミスによる不運な結果をアッセンで一刻も早く挽回したいというダニ・ペドロサは、改修されてからはあまり好きではなくなったというコースに今年は素速く馴染みたいとしている。

「ドニントンのレース後はすぐにアッセンに来たかった。ドニントンではウェットでもドライでも速く走れていたが、レースの時は天候のせいでタイヤと路面が合わず、運がなかったと思う。今週はドライになって欲しいけど、アッセンもまた雨が降りそうな気配。」
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「去年は調子が出るまでに時間がかかったし、改修後のサーキットは自分の好みじゃない。メランドリとストーナーとの激しいバトルになり、難しいレースだった。ただ、今年は物事が計画通りに進みさえすれば、いい結果が期待できると思う。」
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■グレッシーニ・ホンダ、メランドリ「今年は体調はいいが・・・」

写真グレッシーニ・ホンダのマルコ・メランドリは、昨年のカタルーニャの大事故で負傷した直後の身体で戦った事を振り返り、「今回はあの時とは全く状況が違う。ただし、別の意味で難しい状況にはいる」と述べ、今年は体調は良いものの、ホンダのマシンが不調である事をほのめかしている。

■エリアス「MotoGPクラスでアッセンを走るのは今年が初めて」

また、メランドリのチームメイトのトニ・エリアスは、2005年はルマンで腕を骨折してアッセンを欠場、昨年の2006年は初日午前のフリー・プラクティス1で2ラップ目を走行中に転倒し、左肩を骨折してバルセロナに戻っている事から、「MotoGPマシンでアッセンを一度も走った事がないので、今年は初めて経験するサーキットと同じ」と語った。
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■コニカミノルタ、中野選手「ライディング・スタイルに合っている」

コニカミノルタ・ホンダの中野真矢選手にとって、アッセンは昨年のカワサキ時代に2位表彰台を獲得した得意のサーキットだ。中野選手は多くのライダーとは異なり、改修後のアッセンが気に入ったと述べている。
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「多分、自分は改修後のアッセンを気に入った数少ないライダーの1人。去年の予選で2番グリッドを獲得し、レースでも2位表彰台を獲得できた事がその印象につながっているんだと思う」と中野選手。
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「ミシュランを履くホンダの800ccマシンでアッセンを走るのは初めてだが、コースの特性は自分のライディング・スタイルに合っていると思うので、いい結果を期待している。気象条件はドニントンの時に近くなりそうなので、取り立てて慌てるような事態も発生しない筈。」
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なお、チームは今回もフロントまわりの感触改善やチャタリングの解消を狙い、新しいミシュランのフロントタイヤを何本か試す予定だ。


■昨年のレース内容

最後に、2006年シーズンにおけるオランダGPの内容を簡単に振り返っておきたい。
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■ロッシが骨折という衝撃のニュースから始まった昨年のアッセン
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昨年のダッチTTはカタルーニャの大事故の翌週に行われており、本来であれば入院した方が良いとされたマルコ・メランドリなどが、連戦中のノーポイントを嫌って負傷した身体のままレースに参戦していたが、そんな中、過密すぎる写真3連戦は事故が多発する可能性が高いと苦言を呈していたキャメル・ヤマハのバレンティーノ・ロッシが、初日午前のフリー・プラクティスにおいて激しく転倒し、右手首と左手首を骨折するという衝撃的なニュースが飛び込んできた。

当時、安定して表彰台に上り続けるレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンの勢いを抑えておかなければロッシの年間タイトルの可能性が危ぶまれる時期に差し掛かっており、痛み止めを打って完走を狙う以外に方法のないロッシに代わり、チームメイトのコーリン・エドワーズが、ヘイデンの前でチェッカーを受ける事をヤマハが大きく期待したレースだった。

■レースの序盤をリードするエドワーズ、ホプキンス、中野選手
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レースの序盤、トップは3番グリッドスタートのエドワーズ、2番手はポールポジションからスタートしたリズラ・スズキのジョン・ホプキンス、3番手は2番グリッドスタートのカワサキ中野選手がレースをリードしたが、すぐに中野選手はフロントに不調を訴えてペースが上がらなくなり、背後から迫ったニッキー・ヘイデンが中野選手のポジションを奪って3番手に浮上した。中野選手は4番手に後退。
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■浮上するヘイデンと、タイヤトラブルにより後退するホプキンス

レース中盤、タイヤに問題を抱えたホプキンスが後退を開始し、トップはエドワーズ、2番手にはヘイデン、3番手には中野選手が復帰。トップ集団はこれに4番手のホプキンスを加えた4台体制となった。
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■アメリカ人バトルが勃発

レースが終盤に入るとトップ集団は抜け出したエドワーズとヘイデンのアメリカ人2名となり、中野選手は単独3位、その後方の4番手をレプソル・ホンダのダニ・ペドロサとホンダLCRのケーシーストーナーが争う。序盤に好調だったホプキンスは6番手に後退。
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残り2ラップのところでエドワーズがコースアウトを喫し、ヘイデンがついにトップに立つが、エドワーズはエスケープゾーンを抜けてから怒濤の追い上げを見せ、最終ラップ後半の高速区間で再びエドワーズはヘイデンからインを完全に奪い、最終コーナーに先頭から飛び込んだ。
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■優勝を目前にマシンの上でひっくり返ったエドワーズ

この瞬間、優勝を諦めたヘイデンの目の前を、スロットルを開けすぎてリアが草の上でスリップし、その勢いで両足を宙に舞上げ、ハンドルだけをむなしく握るエドワーズと黄色のバイクが横切った。エドワーズはコントロールラインまであと一歩のところで芝生に転落し、無人のバイクはそのままランオフエリアを走り続け壁に激突、砂を巻き上げながら宙を舞った。
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■ヘイデンが母国GP以外での初の勝利

この結果、ニッキー・ヘイデンは通算2度目のMotoGPでの勝利を獲得し、続いて2位のチェッカーをカワサキの中野真矢選手、3位はコントロールラインをストーナーとほぼ同時に通過したペドロサが獲得した。

マシンを起こして何とかコースに復帰する間に後続のライダーに次々と交わされたエドワースは13位でレースを終え、悔しさのあまりマシンのフロントシールドをこぶしでたたき割っている。エドワーズはその後ゆっくりと走行するマシンの上で身動き1つしなかった。


■アッセンのコースレコード
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アッセンのサーキットレコード(990cc)は2006年にニッキー・ヘイデンが記録した1分37秒106、ベストラップレコード(990cc)は2006年にジョン・ホプキンスが記録した1分36秒411。


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