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インディアナポリスGPレース内容、ロッシ「もてぎでタイトルが決まれば最高!」
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  2008年9月19日

2008年度MotoGP第14戦目となるインディアナポリスGPが、ハリケーンが上陸し豪雨となった米国のインディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)において9月14日に決勝レースの日を迎えた。
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ここでは、インディアナポリスGPのレースウイーク中の状況、MotoGPクラス決勝レースの概況と結果、ならびに各ライダーのコメントなどを紹介する。


■MotoGP業界にとって大きな意味を持つインディアナポリスGPの初開催

今回の99年ぶりという、約一世紀を経て2輪ロードレースの舞台として戻ってきたインディアナポリスでのMotoGP初開催は、米国を重要なマーケットとして位置づけるドルナや各バイクメーカーにとって非常に重要なイベントのひとつだ。
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ここまでにドルナとIMS、ならびに関係バイクメーカーなどは、米国でのMotoGP人気の急上昇を狙う上でインディーカーレースやNASCARの熱狂的なファンなど、モータースポーツをこよなく愛し、潜在的なMotoGPファンとしての期待が高いインディアナ州近郊の住人に対して、4輪ロードレースとは醍醐味の異なるMotoGPの面白さをアピールすべく、近隣である地元ケンタッキー州出身のニッキー・ヘイデンを投じたインディアナポリスGPの事前プロモーションを展開してきた。
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■史上最悪の気象条件、ハリケーンと共に上陸した今年のMotoGP

その積極的な広報活動の甲斐あって、事前の調査によれば今回のインディアナポリスGPには15万人の観客動員数が見込まれていたが、今年はレースウイークの開始と同時に大型ハリケーンのアイクがメキシコ湾を通過、インディアナポリスGP初日の金曜日にはテキサス州に上陸してその後も北上を続けるという、グランプリ史上でも希に見る最悪な気象条件に見舞われてしまった。
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■危険な豪雨に見舞われた初日のフリー・プラクティス

メジャー・リーグの6試合が中止となり、観客を運ぶ飛行機などの交通機関にも悪影響が出る中、豪雨となった初日のフリー・プラクティスを終えたバレンティーノ・ロッシは、「日曜日には観客が来られるように天候が回復して欲しい」と絶望的な気象予報が伝えられる中で述べたが、北上中のハリケーンはインディアナ州側にも進路を取り始めており、誰が見てもその願いが叶わぬ事は明らかな状況だった。
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■奇跡的にドライ・コンディションに恵まれた2日目の予選

ところが、ロッシや他のライダーたちの願いが届いたのか、その翌日となる最終予選が行われたグランプリ2日目の土曜日、インディアナポリスは奇跡的に終日の晴天に恵まれている。
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良好なコンディションとなった2日目のIMSをこの日に走行したライダーの多くは、初日の洪水状態の路面での第1区間におけるグリップレベルの低さは最悪だったとするものの、ドライでのアスファルトと流れの良いテクニカルなコースレイアウトには大変な好感触を示しており、MotoGPを初めてサーキットで観戦する多くのインディアナポリスのモータースポーツファンのためにも、白熱したレースでがきるよう翌日の決勝レースまでドライ路面が保たれる事を再び願った。


■決勝当日、午前はドライとなったが125ccクラスのレース中に豪雨
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そしてレース当日の7月14日、午前中のウォームアップ・セッションは2日目のフリー・プラクティスと予選に引き続きドライ・コンディションが保たれ、その後の正午から開催された125ccクラスの決勝レースは誰も予想しなかったドライでのスタートとなったが、このレースは残り6周のところで激しい雨が降り出し赤旗中断、最終的にその時点の順位がレース結果となっている。
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■暴風雨のためMotoGPクラスの後に延期された250ccクラス

さらに雨の勢いが増してコース上に水が溜まった事から、次に予定されていた250ccクラスの決勝レースは一時的に延期となり、先にMotoGPクラスの決勝レースが当初のスケジュール通り午後3時から行われる事になった。
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■中止が心配されたMotoGPクラスは無事にスタート、安堵の表情を見せる地元観衆

最終的にキャンセルもあり得ると心配されたMotoGPクラスの決勝レースだったが、午後2時までに雨は若干弱まり、初日には水はけの悪さがライダーに不評を買ったIMS側も水処理用の路面乾燥車をこの日はコースに導入した事から、その30分後には通常レベルと言えるウェット・コンディションの路面が得られている。
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こうして最悪の事態は免れ、インディアナポリスGPのメイン・イベントに向けてついにMotoGPクラスの全ライダーが予定時間通りにグリッド上に登場。それまで暗い表情をみせていた観客もグランドスタンドに一斉に戻り、活気あるグランプリの風景が一瞬にしてそこに蘇った。

■ハリケーンを考慮するば十分な9万1千人の観客動員数

ちなみに、この日の観客動員数は9万1千人。想定の15万人よりは4万人弱少ない数字にはなったが、当日に吹き荒れたハリケーンの影響を考慮すれば十分な盛況ぶりであり、米国のモータースポーツファンのMotoGPへの期待度が伝わる結果と言えるだろう。スペインやイタリアに続き今年から年に2回の世界グランプリ開催国となった米国でのMotoGP人気が、70年代に続き再び上向き傾向にある事だけは間違いなさそうだ。
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■250ccクラスは結局中止に

なお、MotoGPクラスのレース後に延期されていた250ccクラスのレースは、結局のところキャンセルされるという残念な結果に終わっている。


■インディアナポリスGP、MotoGPクラスのレース結果とポイントランキング

気温21度、路面温度27度、湿度57%のウェット・コンディションの中で無事に開催されたMotoGPクラスの決勝レースは、路面に少し乾いた部分が現れた序盤にトップに立った地元ニッキー・ヘイデンの活躍もあり白熱のレース展開を見せたが、その後は再び激しい暴風雨に見舞われ、路面が水に沈む中、空中にはビニールや空き缶、その他ガラスの破片なども舞う危険な状況となった事から、全28周の残り7周のところでレースは125ccクラスと同様に赤旗中断となっており、その時点の順位が今回のレース結果となった。
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以下にインディアナポリスGPにおけるMotoGPクラス決勝レースの結果と、レース終了時点のポイントランキングを示す。

レース結果
1) バレンティーノ・ロッシ ITA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 37分20秒095(20周)
2) ニッキー・ヘイデン USA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 37分26秒067(20周)
3) ホルヘ・ロレンソ SPA フィアット・ヤマハ・チーム YZR-M1 37分27秒953(20周)
4) ケーシー・ストーナー AUS ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 37分48秒257(20周)
5) アンドレア・ドヴィツィオーゾ ITA JiRチーム・スコット RC212V 37分48秒919(20周)
6) ベン・スピーズ USA リズラ・スズキMotoGP GSV-R 37分49秒740(20周)
7) シルバン・ギントーリ FRA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 37分56秒318(20周)
8) ダニ・ペドロサ SPA レプソル・ホンダ・チーム RC212V 37分57秒353(20周)
9) クリス・バーミューレン AUS リズラ・スズキMotoGP GSV-R 37分58秒537(20周)
10) アレックス・デ・アンジェリス RSM サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 38分02秒532(20周)
11) アンソニー・ウエスト AUS カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 38分07秒274(20周)
12) トニ・エリアス SPA アリーチェ・チーム デスモセディチ GP8 38分16秒057(20周)
13) ランディ・ド・プニエ FRA ホンダLCR RC212V 38分17秒461(20周)
14) ジョン・ホプキンス USA カワサキ・レーシング・チーム ZX-RR 38分18秒448(20周)
15) コーリン・エドワーズ USA ヤマハTech3 YZR-M1 38分20秒708(20周)
16) ロリス・カピロッシ ITA リズラ・スズキMotoGP GSV-R 38分25秒715(20周)
17) 中野真矢 JPN サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ RC212V 38分25秒949(20周)
18) ジェームス・トーズランド GBR ヤマハTech3 YZR-M1 38分28秒063(20周)
19) マルコ・メランドリ ITA ドゥカティ・マルボロ・チーム デスモセディチ GP8 38分41秒118(20周)
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ポイントランキング
1) バレンティーノ・ロッシ [ITA] [フィアット・ヤマハ・チーム] 287
2) ケーシー・ストーナー [AUS] [ドゥカティ・マルボロ・チーム] 200
3) ダニ・ペドロサ [SPA] [レプソル・ホンダ・チーム] 193
4) ホルヘ・ロレンソ [SPA] [フィアット・ヤマハ・チーム] 156
5) アンドレア・ドヴィツィオーゾ [ITA] [JiRチーム・スコット] 129
6) クリス・バーミューレン [AUS] [リズラ・スズキMotoGP] 117
7) コーリン・エドワーズ [USA] [ヤマハTech3] 109
8) ニッキー・ヘイデン [USA] [レプソル・ホンダ・チーム] 104
9) 中野真矢 [JPN] [サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ] 87
10) トニ・エリアス [SPA] [アリーチェ・チーム] 86
11) ロリス・カピロッシ [ITA] [リズラ・スズキMotoGP] 86
12) ジェームス・トーズランド [GBR] [ヤマハTech3] 85
13) シルバン・ギントーリ [FRA] [アリーチェ・チーム] 56
14) アレックス・デ・アンジェリス [RSM] [サンカルロ・ホンダ・グレッシーニ] 55
15) マルコ・メランドリ [ITA] [ドゥカティ・マルボロ・チーム] 48
16) ランディ・ド・プニエ [FRA] [ホンダLCR] 43
17) ジョン・ホプキンス [USA] [カワサキ・レーシング・チーム] 41
18) アンソニー・ウエスト [AUS] [カワサキ・レーシング・チーム] 41
19) ベン・スピーズ [USA] [リズラ・スズキMotoGP] 20
20) ジェイミー・ハッキング [GBR] [カワサキ・レーシング・チーム] 5
21) 岡田忠之 [JPN] [レプソル・ホンダ・チーム] 2


■MotoGPクラスのレース概況、ホールショットはストーナー
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心配された豪雨は1時間ほど前に弱まり比較的に明るい曇り空となったものの、全チームがフルウェット用のタイヤを装着して挑んだMotoGPクラスのレース、シグナルが消えると同時にホールショットを奪ったのは、2番グリッドからスタートしたドゥカティーのケーシー・ストーナーだった。


■タイヤ選択に成功したドヴィツィオーゾがストーナーを交わしトップに
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しかしながら、3列目7番グリッドからの好スタートを見せたJiRチーム・スコットのアンドレア・ドヴィツィオーゾがすぐにストーナーからトップを奪いオープニングラップをリード、2番手となったストーナーを引き離しにかかる。「タイヤ選択が正しかった」とドヴィツィオーゾ。

■オープニングラップ、地元勢はヘイデンとスピーズが好スタート、ロッシは4番手
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ストーナーの背後の3番手にはレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデン、4番手にはポールポジションからスタートしたフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシ、5番手にはブリヂストンタイヤでのデビュー戦となるレプソル・ホンダのダニ・ペドロサ、6番手にはフィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソ、7番手にはリズラ・スズキから今年3度目のグランプリ出場を果たしたAMAスーパーバイクチャンピオンであるベン・スピーズが続いた。


■予選に失敗したライダーの上位進出は困難だった豪雨のインディアナポリス
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なお、今回のレースにおける上位争いはこの7名のライダーによる戦いが中心となるため、ここではレース概況を続ける前に、低いグリッド位置からのスタートと悪条件の路面によりポジション挽回に苦しんだ他のライダーたちの状況やコメントを先に紹介しておく。

■1コーナーで押し出されたカピロッシ「今週の事はもう忘れたい」
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5列目13番グリッドからスタートしたリズラ・スズキのロリス・カピロッシは、オープニングラップの1コーナー通過時に他のライダーから押し出されて最後尾に後退。最終的にはポジションを3つ戻してこのレースを16位で終える事になるが、初日から全く調子が上がらなかった今回のインディアナポリスGPについてカピロッシは「もう忘れたい」とレース後にコメントしている。

■バーミューレンでも不可能だった豪雨の中の順位挽回「グリッド位置が辛かった」
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初日のフリー・プラクティスと同様に雨で滑りやすくなっていた路面の影響から、カピロッシと同様に予選で低いグリッド位置に沈んでいたライダーたちは、14番グリッドから最終的に7位に浮上したアリーチェ・チームのシルバン・ギントーリを除き、今回のレースでは上位に食い込むチャンスはほとんどなかったと口を揃える。

ワイルドカードのスピーズだけはレースウイークを通して好調な走りを見せたものの、残るレギュラー2名が揃って今回は低迷する事になったリズラ・スズキ・チームは「悪天候の魔術師でさえ今回の暴風雨は克服できなかった」と、逆境に強いクリス・バーミューレンでさえ15番グリッドからのスタートでは9位の結果が精一杯だったと説明。バーミューレン本人も「今回はグリッド位置が辛かった」と述べた。

■中野選手「ドライの午前中は4番手、次戦のもてぎには期待」
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予選中の転倒が災いして6列目17番グリッドからスタート、レースも17位で終える事になったサンカルロ・ホンダ・グレッシーニの中野真矢選手は「低いグリッドからのレースは厳しかった。ただ、午前のドライのウォームアップでは4番手タイムだったので、気持ちを前向きに次戦の日本GPには挑みたい」とコメント。グレッシーニ監督は「最悪のコンディションの中でリスクを避け、ダメージを最小限に抑えた真矢の走りに敬意を表したい」とレース後に述べている。

■デ・アンジェリス「前に進むのすら大変だった」
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また、中野選手のチームメイトのアレックス・デ・アンジェリスは、グリッド位置からポジションを2つ上げて10位となった今回のレースを振り返り「ウェットには自信があったのに、レース中はタイヤの消耗が予想以上に激しかった。金曜日の豪雨の中ではうまく走れていたが、今日は前に進むのすら難しかった」とコメントした。

■初日の豪雨では最速だったウエスト「トップ10圏内を狙えただけでも良かった」
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初日の豪雨のフリー・プラクティスでは総合トップ、2日目のドライの予選では最後尾グリッドに戻ってきたカワサキのアンソニー・ウエストは、再びウェットとなった今回のレースでは11番手にまでポジションを上げたが、「後半はグリップがなくなり攻めの走りができなくなった。少なくとも最後尾からスタートしてトップ10圏内を狙えただけでも良かった」とコメント。

■過去2戦と同様にドライでは好調のエリアス「ウェットセッティングは改善できた」
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過去2戦は連続して表彰台を獲得したアリーチェ・チームのトニ・エリアスは、3列目9番グリッドからスタートして12位に終わった今回のレースについて「午前のウォームアップでは3番手タイムを記録したので今回のレースがドライじゃなくて残念だが、ウェット用のセッティングを改善できたので気分は悪くない」と前向きな発言を残している。

■セッティングに問題を抱えるド・プニエ「とにかく転ばないように走った」
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なお、スターティング・グリッドは2列目6番グリッドと上位だったにもかかわらず、レース結果は13位に終わったホンダLCRのランディ・ド・プニエは「スタートがうまくいかずオープニングラップでポジションを5つ落としてしまった。フロントとリアの両方に最初からグリップがなく苦しかったが、とにかくミスをしないようにだけ頑張り、グリップが全然得られない中で最後まで生き残る事ができた。次戦の日本までにウェットでのグリップ不足の問題を解決しておきたい」と述べ、今回はウェット・セッティングに問題を抱えていた事を明かしている。

■メランドリ「フロントもリアもがグリップしない」
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ドゥカティーのマシンへの適応を断念し、1年早くドゥカティー・コルセとの契約を破棄して来期のカワサキへの移籍を発表したマルコ・メランドリは「両方のタイヤにグリップがなかった」と最後尾に終わった今回のレース後にコメントした。


■地元で残念な結果に終わったホプキンスとエドワーズ
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地元のニッキー・ヘイデンとベン・スピーズが上位集団の中で争う中、同じく地元勢としては残念な結果に終わったのがカワサキのジョン・ホプキンスと、星条旗のスペシャル・カラー・マシンで戦ったTECH3ヤマハのコーリン・エドワーズの2名だ。
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■ホプキンス「風が強く方向を変えるのすら難しかった」
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6列目16番グリッドからスタートし、結果を14位に終えたホプキンスは「ドライの走行ラインが現れると思ってリアにハードコンパウンドを選択したが、タイヤが温まるのに時間がかかってしまった。その後は途中で走行リズムをつかんだが、次第に雨と風が強くなり方向を変える事すら難しくなった」と今回のレースを説明。

■エドワーズ「なぜか曲がれない」、トーズランド「タイヤの問題ではない」
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4列目11番グリッドからポジションを4つ落とし、今回のホームGPを15位で終えたエドワーズは「ミシュランタイヤには問題がないのにコーナーがうまく曲がれず、大回りのコーナリングにならざるを得なかった。だからゆっくり走る事しかできず、全然楽しめなかった」と述べている。なお、同様の問題を抱えて10番グリッドからのレースを18位で終えたチームメイトのジェームス・トーズランドは「路面が乾き始めた時にまわりのライダーのペースは上がったが、そこでホイールスピンが激しくなり自分のタイムは全く変わらなかった。ドヴィツィオーゾと同じタイヤを今回は履いていたので、今回の問題がセッティングにある事は間違いない。雨が降り始めて路面がフルウェットに戻ってからは調子が戻ったが手遅れだった」と、セッティングに何らかの問題があった事を説明した。
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■2ラップ目以降の上位ライダーの概況、地元期待のヘイデンがトップに浮上!
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話をレース概況に戻そう。先頭のドヴィツィオーゾと2番手のヘイデンが集団から抜けだし、6番手につけていたロレンソがペドロサとロッシ、ならびにストーナーも交わして3番手に浮上した直後の3ラップ目、1コーナーの手前でついにヘイデンはドヴィツィオーゾを交わし、盛り上がる地元観衆の前で今シーズン初となるレースでのリードを奪った。右のかかとを夏休み中に2箇所骨折し、前回のサンマリノGPをその腫れと痛みにより欠場したばかりのヘイデンは「こんな状況は映画の中でしかあり得ない!」と、この時に不調の今シーズンを振り返り思ったという。

■ミシュラン勢のトップ3体制に割って入ったロッシが2番手に
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このヘイデン、ドヴィツィオーゾ、ロレンソというミシュラン勢にとって久しぶりのトップ3独占に割って入ったのは4ラップ目のロッシだった。ここでロレンソを交わしたロッシは6ラップ目には最終区間の複合コーナーでドヴィツィオーゾとの激しい攻防戦も制し、先頭を行くヘイデンの0.9秒後方の2番手に浮上。
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■身体の痛みに苦しむストーナーと初のブリヂストンに苦しむペドロサ
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同じ頃、前回のサンマリノGP初日には古傷の左手首の骨が自然に剥離、今回のインディアナポリスGPでは初日の転倒により肩と肋骨を強打している5番手のストーナーと、ブリヂストンタイヤにスイッチしてからの初レースに苦戦する6番手のペドロサが先頭の4台から大きく引き離され、この2台に間にはワイルドカードのスピーズが入り込む。
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■6位を確保し好調のスピーズ「バイザーが大丈夫なら4位も可能だった」
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ここで6番手となった現役AMA最高峰クラスチャンピオンのベン・スピーズは、多くの強豪MotoGPライダーを最後まで抑えきって6位という高い成績を獲得する事になるが、「10ラップ目にバイザーを通しての視界が悪くなりその後はアタックできなくなったが、マシン自体は4位が狙えるレベルの仕上がりだった」と述べ、ヘルメットのバイザーに問題が生じなければさらに上の結果が狙えたとレース後にコメントしている。

■ストーナー「序盤にグリップ不足」、ペドロサ「結局ペースをつかめなかった」
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最終的にはドヴィツィオーゾを交わして4位チェッカーを受ける事になるケーシー・ストーナーは「リアのグリップを序盤に失い、ラップタイムをキープできなくなった。それにあの暴風雨の中激しく攻め続ける事は正しい判断とは思えなかった」とコメント。また、スピーズの後ろを走行中にギントーリにも交わされて7位でレースを終える事になるペドロサは「ブリヂストンでの初レースなので最初は慎重に走り、その後は激しく攻め込んだが、結局ペースをつかむ事はできなかった」とレース後に述べた。
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■タイムアタック合戦に突入するヘイデンとロッシ
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2番手のロッシが先頭のヘイデンの真後ろに迫った8ラップ目以降はこの2台のラップタイム合戦となり、10ラップと11ラップ目にヘイデンはファーステストを記録してロッシを0.6秒引き離すが、13ラップ目にはロッシがファーステストを記録しヘイデンまでの距離は再び削り取られる。
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■逃げるヘイデンから前を奪うロッシ

暗雲が上空に戻り豪雨となった13ラップ目、最終コーナーのインにヘイデンとロッシはほぼ同時に飛び込むが、ここで最初にメインストレートに入ったのはヘイデン。続く14ラップ目のバックストレートではロッシがヘイデンに並びかけ、先に10コーナーに飛び込んだのはロッシの方だった。
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■豪雨の中を逃げるロッシ、タイヤに問題を抱えたヘイデンの背後に迫るロレンソ

ついに先頭に立ったロッシは15ラップ目の序盤からヘイデンを引き離しにかかり、見る間に1.5秒の差が2台の間に築かれる。そして雨と風がさらに激しくなり、3番手のロレンソがヘイデンの約7秒後方を走行していた18ラップ目、ヘイデンはタイヤの左側面に問題を抱え、19ラップ目にはラップタイムをロッシとロレンソよりも2秒落とし、続く20ラップ目にはさらに3秒スローダウン。21ラップ目の突入前には3番手のロレンソがヘイデンの真後ろに迫った。
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■暴風雨となりレースは8周を残し赤旗中断、その時点の順位がレース結果に

残り8周、暴風雨が激しくなりこれ以上のレース続行を危険と判断したIMSのレース・ディレクションがここで赤旗を提示し、インディアナポリスGPのMotoGPクラス決勝レースは20ラップ目をもって終了。この時点の順位がレース結果となり、優勝はフィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシが獲得、2位は嬉しい今期初の表彰台を地元で獲得する事に成功したレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデン、3位は2戦連続となる表彰台を獲得したフィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソだった。
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■最多勝利記録を樹立したロッシ、2年ぶりの年間タイトルに完全王手

フィアット・ヤマハのバレンティーノ・ロッシは今回の勝利により最高峰クラスでの69勝目を記録し、1975年に当時の最高峰500ccクラスのチャンピオンだったジャコモ・アゴスティーニが樹立してその後33年間保持していたグランプリ最高峰クラス最多勝利記録を塗り替えるという歴史的快挙を成し遂げている。
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また、現在のランキング2位であるドゥカティーのケーシー・ストーナーが今回のインディアナポリスGPを4位で終えた事から、ロッシのポイントリードは87ポイントにまで広がっており、次戦のもてぎで行われる日本GPにおいてロッシが3位以上を獲得すれば、自動的に年間タイトルが決まる。今回の勝利でロッシは2年ぶりであり自己通算6回目の最高峰クラス制覇に王手をかける事となった。

■ロッシ「次戦のもてぎでタイトルが決まれば最高!」
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「今回は本当に素晴らしい事だらけです。雨のレースで勝ったのは久しぶりですし、また4連勝なんてさらに久しぶりですからね!初開催のインディアナポリスで勝てた上に、アゴスティーニの記録まで破る事になりましたから本当に感動的です。彼の時みたいに自分の記録も30年間くらい破られないといいですね!」とロッシ。

「すごいレースでした。ストーナーを交わした時に勝利のチャンスがあると分かったので、その後はものすごく激しく攻めたんです。ニッキーとも素晴らしい戦いができました。ニッキーを交わすのは本当に大変だったので、彼の走りを称えたいと思います」

「風と雨がすごく激しくなってきた時には、もうあと8周は何とか走りきれそうだと思っていましたが、その後にビールの缶とか、他にもプラスチックの眼鏡だったと思いますが、色んなものが空中を飛んできたので、レースをあそこで終わらせるのは本当に正しい判断だったと思いますね!」
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「真面目に考えても、あんな走行条件で走った事は以前に一度もなかったと思います。ただ、その時点ですでに単独トップを走れていたのは幸運でした。おかげで特に大きなリスクを冒す必要はありませんでしたからね」

「気象条件を除けば今週は自分たちにとって完璧なレースウイークを過ごす事ができました。ポールポジションを獲得し、サーキットレコードを記録し、最後には優勝もできたので、今日およびここまでの1年間を通して必死に頑張ってくれたチームを改めて称えたいと思います。また、今日のタイヤは本当に素晴らしかったので、ブリヂストンにも感謝の気持ちを伝えたいです」
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「ここインディーではとてもレースを楽しむ事ができましたから、来年またここに戻って来るのが楽しみです。これで自分たちはポイント差を大きく広げる事ができましたから、次戦のもてぎで年間タイトルを決める事ができれば最高でしょうね。ただ、まだ全てが終わってはいませんので、このまま集中力を維持して頑張り続けるつもりです」

「最後に今回の勝利を、今日82歳にして惜しくも亡くなった自分の祖父であるダリオに捧げたいと思います」


■2位は地元での今期初表彰台に歓喜のヘイデン「映画のようだった」
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990ccクラス最後の年となった2006年にはバレンティーノ・ロッシのタイトル6連覇を破って念願のMotoGPチャンピオンに輝き、その後800cc時代に突入した翌年以降はホンダと共に苦しいシーズンが続いたレプソル・ホンダのニッキー・ヘイデンは、今期初となるレースでのリードと、ホームで獲得した今期初の表彰台を心から喜んでいる様子だ。

「いやもう、レースをリードしている時は本当に気分が良かったですよ。すごく快適でした」とヘイデン。

「ものすごく久しぶりでしたしね・・・こんな出来事は映画の中でしかあり得ないと思いながら走っていました。過去の2レースを欠場して、復帰した直後のホームで勝利を争えた訳ですからね」
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「集中力を切らさずに走り続けました。バレンティーノの方が特に第3区間で少しスピードがあったので交わされましたが、バックストレートへの進入で彼が白線に乗り上げた時には少し距離を戻す事ができたので、このままなら大丈夫だろうとその時には思っていました」

「でも、路面が乾きかけていた時にタイヤの左側を酷使してしまったので、途中で雨が激しくなってからはそこに問題を抱えてしまい、水の溢れかえった路面を走るのがひどく難しくなったんです」

「ホームのレースでの勝利は誰でも夢見る事ですが、今シーズンのここまで流れもあり正直に言えば今回はそこまで貪欲にはなっていません。この2位表彰台を心から喜びたいと思っているんです」
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「自分のチームとスタッフ全員、それに友人たちや家族など、厳しい時期も自分から離れずに過ごしてくれた全ての人たちに深い感謝の気持ちを伝えたいと思います。またインディーならびに今回のレースを実現してくれた方々全員に感謝しています。実家からこんなに近くでレースができるなんて最高の気分ですし、本当に楽しかったですね」

「今日は全力で戦いました。余裕があったとは言えませんが、それは最初から予期していた事です。レース中断が提示された時はかなり危険な状況でしたし、正しい判断がなされていたと思います。風が特にすごくてひどく厳しい走行条件でした。ドライの走行ラインがあると思っていたら、突然全てが水の中でしたからね」
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「もし残り8周のレースが再スタートする事になっていたら、心のどこかで『おいおい、走っていた位置からやり直そうよ』と思ったかもしれません。ただ、自分は年間タイトルを争っている訳ではないので、実際には何も心配する必要はないんですけど」

「ファンの皆さんにも本当に感謝しています。自分たちはたった1時間のウェット・コンディションでしたが、彼らは木曜日からずっと外で過ごしてくれていましたからね」

■ドゥカティーへの来期移籍を公表し、ホンダに感謝を述べるヘイデン
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また、今年を最後に長年過ごしたホンダを離れ、来期はドゥカティー・ワークスに移籍する事をレース後に発表したヘイデンは、AMA時代からのホンダとの活動を振り返り、ホンダに対し以下の感謝のコメントを残している。

「AMA時代に加えてMotoGPルーキーイヤーから現在までですから、自分のホンダでの活動は本当に本当に長いんです。ホンダの中で自分と一緒に働いてくれた方々全員には心から感謝しています」とヘイデン。

「HRCとホンダ、それにレプソルなど、多くの素晴らしい方々と仕事を一緒にする事ができました。子供の頃からずっとこのチームでレースをする事が夢でしたし、本当に楽しく過ごす事ができました。タイヤ技術者からクルー・チーフまで、ここで働く全ての方々に、ここまでの全ての内容について感謝しています」
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「遊びではありませんのでもちろん辛い時もありましたが、素晴らしい日もたくさんありました。世界チャンピオンの座をここで獲得できたのは自分のレース経歴の中における最大の出来事でしたし、他にもホンダとはアメリカでも一緒にいくつかタイトルを獲得しています。AMAスーパースポーツ、AMAスーパーバイク、それにデイトナ200でも勝利を記録しました」
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「また、ダート・トラック選手権もホンダで何回か勝っています。スプリングフィールド・ショート・トラックが2回、ペオリアTT、それにグランド・ナショナル・ダート・トラックでは合計4回です」

「ベイリスやエドワーズ、それにメランドリなどを相手に2003年に勝ち取ったMotoGPのルーキー・オブ・ザ・イヤーも大きかったですね。これも自分にとっては誇りに思える事です。そしてもちろん、ラグナ・セカでの2回のMotoGPでの勝利は最高の経験でした」
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「とにかく今は全ての人たちに感謝したい気持ちだけです。今年の残りのレースでいい結果を残す事こそが、彼らに対する最高の恩返しの手段だと考えていますので、今はそれを実現するのが目標です」


■苦手の雨を初めて制したロレンソが3位「モーターホームから出るのも嫌だった」
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ウェットを大の苦手とし、雨のレースでは過去に一度も表彰台を獲得した事がなかったフィアット・ヤマハのホルヘ・ロレンソは、MotoGP最高峰クラスに来てやっと達成した雨の中での表彰台に歓喜し、今後は苦手意識がなくなるかもしれないとして以下の通りコメントしている。

「ヨーロッパ選手権、スペイン選手権、それにマヨルカ選手権の時から数えても、ウェットのレースで表彰台に乗ったのは、自分のレース経歴の中で今回が初めての事です」とロレンソ。
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「正直言うと、今日はレースの開始が迫っても、暖かくて居心地のいいモーターホームから出たくありませんでした。だって本当に雨のレースは嫌いなんです。ただ、今日をきっかけにその流れが変わる気もしますね!」

「スタートがうまくいったのには自分でも驚きでした。その後はダニを交わす事ができて、続け様にバレンティーノの前にも出られたので、その時にはさらに驚いていたんですよ!やっと雨の中でも普段通り速く走れる事が分かって今日はものすごく嬉しかったですね」

「バレンティーノに抜き返された時には後ろについて行こうと頑張りましたが、彼のペースは少し速すぎたので、その後は一貫したペースで走る事に気持ちを切り替えていました。すると突然そこで豪雨になり、強い風が狂ったように吹き荒れたんです」
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「まだ自分のペースは十分に速くて、そこからニッキーとの距離を縮める事ができました。後ろから見ていて彼が何か問題を抱えているのが分かりましたし、多分もうあと何周か走れれば彼を交わす事はできたと思いますが、すでにとても危険な状態だったのでレースをあそこで終わらせてくれた事の方が良かったです」

「まだ自分たちは完璧な状態とは言えませんが、今日のバイクとミシュランタイヤの調子はすごく良かったので、ヤマハとミシュラン、それに必死に頑張り続けている自分のチームには改めて感謝したいと思っています」

「今日のバレンティーノは素晴らしかったですね。一緒に残りの4レースもこの調子でいける事を願っています」


■シーズン中に手術の可能性も拭いきれないストーナー
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なお、古傷である左手首の痛みに耐えて今回のレースを4位で終えたドゥカティーのケーシー・ストーナーは、場合によっては最終戦を迎える前にその手首を手術する可能性もあるという。

2003年に骨折した左手首の古傷が突然前回のサンマリノGP初日に剥離骨折し、本人はレース当日まで隠していたものの今回のインディアナポリスGP初日の転倒によりその左手首の状態がさらに悪化した様子のケーシー・ストーナーは、サンマリノGPでは「手術はシーズンが終わるまで受けない」とコメントしていたが、今回ドゥカティーのリビオ・スッポ監督は「ケーシーが痛みに耐えられるようならシーズン最後まで戦うが、そうでない場合は早めの処置を取る事も検討したい」と述べ、ロッシのタイトル獲得後はストーナーに手術を受けさせる可能性がある事も漏らしている。
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また、ストーナーが手術を受けた場合には2ヶ月半の静養が必要となる事から、その後の今シーズン残りのレースを全て欠場する事は避けられないようだ。

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